店主の旅行記 ウィーンで蕎麦の種を蒔くNO.1

ウイーン

そばありて
「信濃では 月と仏と おらがそば」

有名な一茶の句であるが、そんな句も知らずに当真田の地に住みついて、 早二十五年の歳月が経ってしまった。
蕎麦(ソバ)を美味しいと食べる人達を不思議にさえ思ったものだった私が、 いつしか、真田の地と人と、また蕎麦にも魅せられつつ流れた月日であった。

今から五年程前であったろうか、蕎麦に対して夢を持ち始めたのは…………。

中央アジアが原産で、朝鮮から日本に伝わり、 日本で栽培されるようになったのは奈良時代から と言われている蕎麦。世界の各地で栽培されているが、 日本の様に細く長く切って食べる文化はない。

そこで、シルクロードならず、「そばロード」を実現してみたいとの 夢を描くようになった。

蕎麦は気候が合えば、わずか80日から90日で刈り取ることができる。

それならば、蕎麦の種を蒔きながら世界各地を回り、 また80日~90日してその地に戻り、そこで刈り取りしながら、 その国、その土地に合った食文化や日本の蕎麦の作り方等を 紹介しながらの気ままな旅ができたら最高に楽しそうだなー、 なんて夢のまた夢を思い描き、お酒を呑めば夢とも愚痴ともつかぬ 話を色々な人に語ってきたものだった。

それでも、何でも話はしてみるものだね。

主人の東京の友人に話したのがきっかけで、その友人から 「六月にウィーンで蕎麦を蒔いて来た人がいるから紹介してあげるよ」と言われ、 八月にその蕎麦を蒔いて来た江川三郎御夫妻と 初めてお会いする機会が訪れた。

上田駅より電話をもらい、バスで途中まで行くからとのこと。

例年になく暑い昼下がり、本原のバス停に見かけない夫婦が降り立ったので、 迎えに出ていた私は迷うことなく声をかけることができた。

江川氏の方はリュックをかつぎ、大きな段ボール箱を持ち、 夫人は旅行カバンでバスから降りてくる、 チョット異様な出で立ちであったことも幸いしている。

まあ、何はともあれ、佐助にお迎えして、一休みして戴いた。

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